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Why We Play vol.12:小沼ようすけ & 井上銘【後編】

音楽と人、そして楽器。さまざまな表現手段の中から、なぜギターを選んだのか? そんな素朴な疑問にフォーカスを当て、プレイヤーの内面に深く迫る連載企画「Why We Play」。今回は、11月3日(土)湘南T-SITEにて行われるJazzmaster誕生60周年を記念して行われるイベント「FENDER JAZZ CLUB」での共演が決まっている小沼ようすけと井上銘が登場。現在の日本ジャズシーンを牽引するギタリストである小沼ようすけと、若手実力派ジャズギタリストの井上銘が語り合うジャズギターの魅力とは?

Why We Play
新しいワールドが始まると思わせる“何か”がある。Jazzmasterはそれくらい未知のギター(小沼)
自分自身にもJazzmasterにも未開の地がたくさんある。一緒に面白いことができたらいいなと思っています(井上)
 

―  インタビュー前編の最後に、11月3日にJazzmasterを使用してのイベント「FENDER JAZZ CLUB」があるとお話がありましたが、お二人が使用しているJazzmasterのお話も聞かせてください。

井上銘(以下:井上) 7月からJazzmasterを使い始めたばかりですが、すでにライヴでもその素晴らしさを発揮してくれています。Jazzmasterはアームも独特で、ストラトとは違う感じのビブラートのかかり方が面白いです。あとはスイッチがたくさんついていて、これが便利(笑)。で、思うのは、Jazzmasterって本当に発明品の類のものだなと。1本のギターだけど本当にいろんな音をカバーできるんです。例えば、スイッチの切り替えで箱モノみたいな音もするし、ピックアップを切り替えたらポップス的な場面でもすごくいい感じの音を出してくれるんです。普通だったら足元だったりアンプで音色を調整していくと思うんですけど、Jazzmasterはギター本体(手元)でかなり音の選択肢を作れる楽器だと思います。だから発明品という印象だし、正直クセの強い楽器だと思っていたんですけど、すごく扱いやすい楽器で大好きです。

小沼ようすけ(以下:小沼) 僕はヴィンテージのJazzmasterをずっと使っています。もちろんライヴでも使っています。そして、新しく現行のLimited Edition 60th Anniversary '58 Jazzmasterも買いました。Jazzmasterという名前なのに、ロックギタリストだったり例えばベンチャーズといったサーフミュージックというカテゴリーで使われているんですけど、実際に弾いてみるとジャズトーンなんですよ。そこをどう消化して自分のスタイルとして使おうか模索しているところです。

―  なるほど。

小沼 楽器の魅力としては、まず単純にフレット幅が弾きやすいです。それと、高音のキレイさを挙げたい。高音を弾いた時、弾きやすさと音の良さにまずは驚きました。音の太さも特徴です。Jazzmasterが世に出て60周年なんですけど、また新しいワールドが始まるんじゃないかなって思わせる“何か”があるんです。それくらい未知のギターでもあります。そこがすごく魅力的ですね。

井上 確かに未知な部分はありますね。Jazzmasterって時代を先取りしていた楽器なんですよね。

小沼 まさにそういう感じです。発売開始から60年も経つのに、今見るとすごく今っぽいんです。

井上 同感です。だからこれからこのJazzmasterで、いろんなことをする人が出てくると思っていて。自分も面白い使い方をしていくと思うし、本当に可能性がたくさんあるギターですね。

小沼 それと、ジャズの世界においてJazzmasterは前例がない。ジョー・パスが一時期Jazzmasterを弾いていた動画や音源はありますけど、現代ジャズシーンにおいてJazzmasterを弾きこなしているというか、“この人こそJazzmaster”っていうジャズギタリストがいないんです。そういう人がこれから出てくる気がしますね。

―  Jazzmasterなのにまだジャズ業界の手垢がついていないと。

小沼 そこがまたミステリアスで魅力的なんです(笑)。世界中に多くのジャズギタリストがいるのに、Jazzmasterの名手が何で出てこなかったんだろうというのが不思議です。うーん、ミステリアスですよね、Jazzmaster!

―  お二人ともギターを始めたきっかけがロックなので、ロックで鳴らされたJazzmasterの音も知っているし、今は第一線のジャズギタリストですから、ジャズ界がアプローチしていないJazzmasterの音も知っている。そうなると、Jazzmasterに潜んでいるまだ誰も開けてない扉をお二人が開けてくれるような気がします。

小沼 そこが楽しみなんですよ。弾くととにかく新鮮で、“これもできるし、こういうのもできるのか”っていうのを、僕もどんどん今発見している感じですからね。

井上 しかも、ようすけさんや俺みたいな箱モノを弾いてきたギタリストが、Jazzmasterを弾くのが面白いと思っていて。多分、フェンダーの人も予期しない使い方になる気がします。そこは僕らに限らず、箱モノを弾いてきた人がJazzmasterを弾くとかなり面白いと思います。

―  お二人がジャズマスターのどんな扉を開いてくれるのか楽しみですが、11月3日にフェンダーのジャズイベント「FENDER JAZZ CLUB」があるので、そこでも今までとは違うJazzmasterが聴けそうですね! 改めてイベントに向けての抱負を。

井上 僕は今までJazzmaster、もっと言えばいわゆるStratocaster系のギターに疎い人間で、どちらかと言うとハムバッカー系の箱モノを弾いてきたんです。でも、ここ3年くらいの間にフェンダーのギター、つまりシングルコイルのギターがすごく好きになってきたんです。で、そんな僕が今までの箱モノのギターを弾いてきたイメージでJazzmasterを弾くと、フェンダーのギターを使ってきたギタリストからは“いびつ”に見えるみたいで(笑)。それがけっこう面白いんじゃないかなと自分では思っているんです。なので、僕にもJazzmasterの未開の地を開拓できる可能性はあるかもしれないなぁって。もちろん、自分自身にも未開の地もたくさんあるし、Jazzmasterにも未開の地がたくさんあるし、一緒に面白いことができたらいいなぁって思っています。

小沼 僕もずっと箱モノを弾いてきたし、そこにジャズギタリストとしてのキャリアがあるんですけど、Jazzmasterは箱モノではできないことができると思っています。だから、今まで自分がやってきたことプラスアルファ、可能性をJazzmasterに感じているんです。そのプラスアルファを11月3日のイベントで、今まで経験してきたことを踏まえて、Jazzmasterで何ができるのかを初披露できると思っています。銘くんと二人、お互いJazzmasterを使って音色はどう違うのかとか、見どころや聴きどころはたくさんあるはずです。

―  ジャズ好きな人だけでなく、ロック系でJazzmasterを使っている人も、このイベントを観たら発見がありそうですね!

小沼 Jazzmasterってとにかく振り幅がすごいですよ。クリーントーンから、最小の音から、最大の音量までいけるんです。箱モノはアコースティックな響きもありつつ、音量の最小から最大までの振り幅はやっぱりJazzmasterに比べると狭いです。その代わり、箱の雰囲気が味わえる。でもJazzmasterは、ダイレクトに鳴った音がアンプから出てくる感じなんです…。こうやって話しているとJazzmasterを弾きたくなる(笑)。

―  (笑)。では最後に、ギタリストとしての今後の夢を聞かせてください。

井上 前編でも話しましたけど、自分のサウンドで勝負したいです。そして、ジャズの歴史の中で名を残したギタリストはたくさんいると思うんですけど、僕もその世界の中の一人になりたいですね。

小沼 自分の今あるスタイルで、世界中をつなぐ音楽をどんどん作っていけたらいいなと思っています。あと、最終的には銘くんも言っていたように、ワールドワイドになって、自分の中で“世界”が当たり前になるといいなと思っています。

―  お二人の活躍が楽しみですし、ジャズ界のJazzmasterの一人者のイスが空いているので、そこもぜひ狙ってほしいです。

井上 たしかにそこ、空いてますからね(笑)。

小沼 今日話していて改めて感じたのは、ギタリストで本当に良かったなぁって。だってギターってどこでも弾けるわけじゃないですか。別に車の中ででも弾けるし、ツアー先の部屋でも弾けますから。で、考えてみたら、Jazzmasterは箱モノよりも生音が小さいから部屋でもガンガン弾ける。そういうところでも今っぽいですよ。旅先のホテルの部屋でも、ギターを弾くことを楽しめますからね。楽しいギターの中でもいろいろ楽しめるJazzmaster。11月3日、僕らがどんな演奏をするのか楽しみにしていてください。

› 前編はこちら

 

小沼ようすけ&井上銘が所有する Jazzmaster®

Why We Play

Limited Edition 60th Anniversary Classic Jazzmaster®
「7月から使用しています。意外とフロントピックアップの音が好きで、独特の抜け方をするんです。Jazzmasterはクセの強い楽器の印象だったんですけど、どんなシチュエーションにもフィットするし、ギター本体(手元)でかなり音の選択肢を作れる楽器だと思います」
› Limited Edition 60th Anniversary Classic Jazzmaster®製品ページ

Limited Edition 60th Anniversary '58 Jazzmaster®
「純粋にこのフレット幅とか高音のキレイさ、そしてハイポジション時の弾きやすさに驚きました。あとは音の太さ。Jazzmasterは誕生60周年ということですけど、何かまた新しいワールドが始まる予感がします。それくらい未知のものだし、そこがすごく魅力的ですね」

PROFILE


小沼ようすけ
14歳でギターを始める。2001年にSONY MUSICよりデビュー、10年間在籍。現在までにSONY他から10枚のリーダー作品をリリース。2004年、リチャード・ボナ(Ba)、アリ・ホニッグ(Dr)をフィーチャーしたトリオアルバム「Three Primary Colors」をニューヨークで録音。2010年、フレンチカリビアンのミュージシャンたちとレコーディングした「Jam Ka」発売。グアドループの民族音楽グオッカの太鼓(ka)がフィーチャーされたこの作品で独自の世界感を展開。2016年、Flyway LABELを設立。第一弾作品として、パリで録音された「Jam Ka」の続編 「Jam Ka Deux」をリリース。ジャズをベースにさまざまな国を旅して得た影響、経験を音楽に採り入れながら、世界を繋ぐ創作活動を続けるギタリスト。エレキギターの他にナイロン弦アコースティックギターも使用する。
› Website:http://www.YosukeOnuma.com


井上銘
ギタリスト、コンポーザー
1991年5月14日生まれ。神奈川県川崎市出身。15才の頃にギターをはじめ、高校在学中にプロキャリアをスタート。2011年10月EMI Music Japanよりメジャーデビューアルバム「ファースト・トレイン」を発表。2012年1月に同作で「NISSAN PRESENTS JAZZ JAPAN AWARD 2011」アルバム・オブ・ザ・イヤー(ニュースター部門)を受賞。2012年9月よりフルスカラシップ生として米バークリー音楽大学に留学。退学後、NYに滞在しライブ活動の後、2014年6月に帰国。2013年11月にUniversal Musicより2ndアルバム「ウェイティング・フォー・サンライズ」を発売。2016年4月、渡辺香津美氏のギター生活45周年のアルバム「Guitar Is Beautiful KW45」に参加。同年4月、同年代の精鋭ミュージシャン達とのPOPSユニット”CRCK/LCKS(クラックラックス)”でデビューアルバム「CRCK/LCKS」(クラックラックス)をリリース。6月にはブルーノート東京で世界最高峰のジャズギタリスト Kurt Rosenwinkel(カート・ローゼンウィンケル)と共演。2017年、自身の新しいユニット、MAY INOUE STEREO CHAMP (類家心平tp、渡辺翔太keys,pf、山本連b、福森康ds) を結成。同年6月21日、ReBorn Woodより同メンバーと創り上げた自身最大の意欲作であるサードアルバム「STEREO CHAMP」を発売。2018年4月には”MAY INOUE STEREO CHAMP”として初のブルーノート東京公演をソールドアウトさせ、大成功を収めた。また、今秋には新作のリリースが予定されている。
› Website:https://ameblo.jp/may-inoue/