Inside the Song:マーク・ノップラーが語る、『Sultans of Swing』での伝説的なソロ誕生とFenderとの出会い

Dire Straitsの時代を超えた不滅のデビュー・シングルとその伝説的なソロを分析します。

Mark Knopfler's Fingerstyle Mastery

数々の栄誉を手にしてきたマーク・ノップラー率いるDire Straits。その中でも最も素晴らしい業績は、彼らがデビュー・シングルに『Sultans of Swing』を選んだという事実でしょう。

想像してみてください。世界中の人々が初めてこのブリティッシュ・ロック・バンドを耳にしたのは、永遠の名曲となる伝説的なギター・ソロだったのです。

それは上々のスタートでした。

このギター・ソロこそ、『Sultans of Swing』を名曲ならしめた重要な要素のひとつでした。リリース後、UKシングル・チャートでの最高位は第8位、ビルボード・ホット100では第4位を記録しました。そして数十年が経ち、この曲のギター・ソロはギター・ワールド誌の「最も偉大なギター・ソロ」の第22位に選ばれました。さらにローリングストーン誌の選ぶ「最も偉大なギター・ソング」の第32位にもランクインしています。


 

1961年モデルのStratocaster®を操るノップラーは、精密なスケールに乗った30秒間のソロ・パートで口火を切り、引き続き次のヴァースへと突入します。続く40秒間のより早く、より自由奔放なアルペジオが曲を一段と盛り上げていきます。

もしもノップラーがこの曲にストラトを使わなかったら、『Sultans of Swing』はこれほどまでに名曲とはならなかったでしょう。

フィンガースタイル・マスターであるノップラーは、当初この曲を「オープン・チューニングにしたナショナル社のスティールギターで書いた」と、ギター・ワールド誌のインタビューで語っています。

「(最初に作った楽曲は)何だか単調に聴こえてね。でも1977年に初めてストラトを手にしてからは、すべてがガラリと変わったんだ。歌詞はまったく同じだったのにね」とノップラーは言います。「’61ストラトで弾いてみたら、曲が生き生きとしてきたのさ。このギターはそれから何年間も俺のメインギターとなり、ファースト・アルバムでは基本的にすべてこのストラトを使った。そして新しいコード進行が次々と生まれ、ぴったりとはまっていったんだ。」

『Sultans of Swing』のデモ・バージョンは1977年にレコーディングされ、その後BBCラジオで何度かオンエアされました。するとレコード・レーベル同士の争奪戦が巻き起こり、最終的にDire Straitsはフォノグラム・レコーズと契約しました。そして1978年、『Sultans of Swing』を再レコーディングし、バンド名を冠したデビュー・アルバム『Dire Straits』に収録。1979年1月、『Sultans of Swing』はシングルとして世界へ向けてリリースされました。


 

『Sultans of Swing』は、当時としては大胆な楽曲でした。

ノップラーは、さびれたパブで熱のこもった演奏を聴かせ、自らを“Sultans of Swing”と称するジャズ・バンドをモデルにしたこの曲を、ボブ・ディラン風に語りかけるように歌っています。曲中に登場するバンドは、観客に伝わるかどうかは関係なく、音楽への愛のために演奏していました。曲中では“すべてのコードを知り尽くしている”というGuitar Georgeや、“ホンキートンクを弾きこなす”Harryを称賛しています。

ストレートな表現の歌詞は、70年代後半に流行した甘ったるいディスコ・ソングや苦悩を抱えたパンクからはかけ離れたものでした。ノップラーの弾くストラトのクリーンなトーンと、的確でパーフェクトなタイミングのリックがなければ、この楽曲のユニークさは出せなかったでしょう。

ライブで演奏されるたび、ノップラーは『Sultans of Swing』の有名なソロに磨きをかけ、曲に新たな生命を吹き込んでいます。最も有名なバージョンは、ネルソン・マンデラ生誕70周年記念コンサート(1998年)でエリック・クラプトンと共演した際の、11分間に渡る壮大なプレイでしょう。


 

今日までノップラーは、彼が初めて手にしたストラトこそが、彼の伝説的なキャリアを通じて一貫したサウンドとヴァイブにインスピレーションを与えているギターだと考えてきました。事実、すべてはストラトと『Sultans of Swing』から始まったのです。

「自分の作った音楽が、演奏する楽器によってどのように形作られるかという格好の事例で、若いプレイヤーにもよい手本となる」と、ノップラーはギター・ワールド誌に語っています。「ある曲を演奏してみてしっくりこないと感じたら、楽器を変えてみるといい。アコースティックからエレクトリック・ギターに持ち替えてみるとかね。オープン・チューニングを試してみてもいいかもしれない。何とかして変化を起こすことが大切だ。」

「ソロに関して言えば、あれは俺が毎晩弾いていたフレーズから組み立てたものさ。Fender Twinアンプにストラトを直結し、3段階セレクタースイッチを無理やりミドル・ポジションにセットした。そうして生まれたのがあのサウンドなんだ。あの曲のおかげで、5段階セレクタースイッチを搭載したギターが増えたんじゃないかな。」

By: Mike Duffy