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CHABO スペシャルインタビュー

国民的なギターヒーロー・仲井戸"CHABO"麗市。そんなCHABOにインタビューを行った。
ギターと共に生きてきた半世紀を振り返りながら、CHABOが言葉にしてくれた、ギターとの想い出、ギターへの愛、そして深淵なるギターの魅力について。

CHABO

Photo: 三浦 麻旅子

キース・リチャーズ、エリック・クラプトン、ジミ・ヘンドリックス・・・・・・エレキギターを手にする者が、その存在に必ずや憧れる偉大なるギターリスト達。日本で言えばそこに間違いなくこの男の名前が加わるはずだ。男の名前は仲井戸” CHABO”麗市。80年代、忌野清志郎と共にRCサクセションとしてお茶の間までロックさせ、09年に盟友・清志郎が他界し、RCの活動が止まってからも、CHABOはギターを手放すことなく、日本中でご機嫌なロックンロールとリズム&ブルースを鳴らし続けている。

そんなCHABOのギターとの出逢いは7、8歳の時だという。「ウチの実家は従業員が数人にいた街の小さな印刷工場だったんだ。従業員の一人、久保さんっていう背の高いお兄さんが、昼休みになるとギターを弾いて、プレスリーやポール・アンカを歌ってて。まだガキだから、音が綺麗だなぁとかそんなことしかわからなかったけど、ギターとの最初の出逢いはそれだね。それにしても、日本のお茶の間は歌謡曲の時代だから、ポール・アンカやプレスリーをギターで歌うとは、久保さん随分モダンだよな」と当時を懐かしそうに振り返った。

そして中学2年の時、今度はエレキの洗礼を受けた。ラジオから流れてきたビートルズだ。ビートルズのエレキサウンドにしびれたCHABO少年は、音楽誌の表紙を飾ったオカッパ頭の4人に憧れ、バンドを組もうと思い、エレキギターを物色し始める。「俺は地元・新宿で遊んでるワルで、近所にあった丸井の月賦でやっとの思いで買ったのがテスコのセミアコ。リバプールサウンドに憧れたからね。その頃、ガキにとってはフェンダーのギターは憧れというか見るかかっぱらうかしかなくて(笑)」と、笑わせてくれた。

ちょっと意外なのがCHABOがかつてはワルだったこと。取材で会うCHABOはいつも優しくどんな質問にも丁寧に答えてくれ、しかもこうしてユーモラスだ。それを本人に告げると「ワルって言ったってたかが知れてるよ(笑)。でも、ギターやバンドを始めた前提にはそれがあると思う。学校からはみ出して、新宿を彷徨いてただけど、そんな日常とは違う俺の新たなる居場所がロックで、その象徴がギターだった気がする。ギターを持ってりゃ人と会って話せたしね」と話してくれた。そして、優しい表情のままCHABOが言葉を続ける。「月賦でギターを買ったはいいけどカネがないからギターケースもない状態で、お袋が作ってくれた布切れをギターにかけてバスに乗ってライブハウスに行ってなぁ。しかも当時は長髪で足元はわらじ(笑)。まぁヒッピー時代かな。職務質問なんてレベルじゃなくて尾行の対象(笑)。でもそんな姿にある種憧れたのかも(笑)。アーロ・ガスリーが映画の中でギターを持って旅する姿とかに。そんなふうに俺はアイデンティティを探してたのかも。ギターを担いでいりゃ俺にも立つ居場所があるぜって。ちょっとポエティックに言うと、ギターが俺にとってパスポートのようなもので、ギターがあったから世の中に出て行けたし。もしギターがなかったから、俺は確実にここにはいないし。でも、ギターではなくナイフを手にした奴だっていた……。俺もギターがなかったら本当にどーなってたかわからない」と。

エレキを手にした CHABOの世界は急速に変化していった。

まずは聴く音楽が広がった。最初はビートルズ、やがてストーンズ、アニマルズ、キンクスも聴くようになると、徐々にバンド質感の違いがわかってきた。CHABOの言葉を借りるこうだ。「ビートルズはとびきり好きなバンドだけど、ブルースといったブラック・ミュージックが背景に色濃くあるストーンズ達の質感がすげえ好きになってく」。そこからブルースにも傾倒し、ブルース・ロックにはまり、好きなギターリストも、B・Bキング、ジミ・ヘンドリックス、ピーター・グリーン…と好きな音楽に合わせて変化し、プレイスタイルもそこから影響を受けた。

そんな中、CHABOの人生の歯車が大きく動いた。20歳を少し過ぎた時、同じくブラック・ミュージックを愛する忌野清志郎と出逢う。

「清志郎くんはオーティスが大好きでね。レコードを聴かせ合ったりもした。それで、ある時清志郎くんからRCで一緒にやろうって誘われて。それで一緒にプレイすることになったんだけど、オーティス好きな清志郎くんのバッキングならフェンダーだなって思った。ソウルにはテレキャスだと思っていたんだけど、オーティスならやっぱりスティーブ・クロッパーが横に居るからね。で、テレキャスを使ってたけど、ある時ストラトキャスターを買ったんだよ。それが俺が最初に自分で買ったフェンダーのギターかも。で、RCのある時からずっとメインはストラトを弾いてたかな」とCHABO。

因みにCHABOが弾いていたストラトは、ブラッキー、しかもクラプトンのシグネイチャーモデル。「あのギターは手元にミッドブースターが付いていて、それも魅力の1つだったけど、結局、俺はブースターに関しては足元でペダルだったね。でもあのブースターはとても良いアイデアだと思うよ」と、CHABOのRC時代の盟友・ブラッキーのクラプトン・シグニチャ―モデルを改めて愛しんだ。

そのブラッキーでCHABOがRC時代に弾きまくった曲が「雨あがりの夜空に」。この曲のギター・リフは日本のロック史上一番有名なギター・リフと言っても過言ではない筈だ。そのリフについてCHABOがこんな秘話を教えてくれた。「あれはRCが新しい体制になった時に生まれた曲で、ステージングをいろいろ模索してる頃、2人でエンディングで盛り上がる曲を作ろうとしてたんだよ。バンドとしてストーンズが解りやすいモデルだったんで、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」みたいな俺達にとっての王道のリフを求めていたんだけど、「雨あがり」のはストーンズ路線だけど、実はFENを聴いていた時に流れてきた、名前も知らないアメリカのバンドの曲のリフがヒントだったんじゃねーかな」と。それにしてもあのギター・リフをCHABOは今まで何回弾いてきたのだろうか?「1万回は超えてるね(笑)」と嬉しそうに笑うと、こう続けた。「で、俺にもあのリフに関してはちょっとした、ささやかな自負もあってさ。〝この曲の今日のテンポは俺のテンポだ″っていうね。だけど、昔はライブ前の酒の量に関係したりしたんだけど(笑)、もの凄く速いテンポの時もあって。俺は自分で歌わないからいい気なもんだけど、清志郎はそのテンポで歌わないといけないから大変だよね。でも、あいつはそういうことを煩く言う奴じゃなかったから、ライブが終わってから、『仲井戸くん、ちょっと今日のは速かったね』って(笑)」と、清志郎のことを語るCHABOはいつだって少年のようだ。 もう1つ、ギターを巡る清志郎&CHABOの秘話にして二人の性格を言い現したエピソードを教えてもらったので記しておく。それはRCのハワイでレコーディングをした時のこと。レコーディングが煮詰まったので、二人でギターショップに行ったそうだ。「清志郎くんは買うのが早いし、だいたいいいものを選ぶの。俺はその真逆。迷って迷って、明日また来ます!って感じ。で、どっちを買ってもあっちにすればよかったってなる(笑)。パッパッと決める清志郎くんと、グズグズしてる俺、二人の違いの象徴かもね」と。話を聞いて、清志郎とCHABOの二人の友情を結んでいた1つにギターもあったんだなぁと思った。

CHABOがギターを手にしてから既に半世紀という時が流れた。で、今CHABOはギターとどんな風に接しているのだろうか?驚く答えが返ってきた。「のべつギターを手にしてるよ。放すのがあり得ない。メシの時もギターを抱えたままだったり。それで、奥さんに怒られる″ご飯作った人に失礼でしょ!″って(笑)。それはそうなんだけど、貧乏性というか、いつ曲が出来るかわからないから、それこそ寝る時だって手放さない時もある。寝ながらでも曲を作りたいんだろうね」と。これだけずっとギターと共に生きて来たのだから、ギターがないと落ち着かないのかもしれませんね?と返すとCHABOは「それとは違うかも、ギターは誰かにやりなさいって言われて始めたものじゃなくてさ。勉強しなさい、外で遊びなさい。そんな風に大人から言われたものじゃない、自分からやりたいと思った初めてのことがギターだから。だから、誰に止められようが弾きたいんだろうね。」と変わらぬギター愛を口にした。

そんなギターに対する想いは当然ステージでも顕著だ。去年もCHABOのライブを、フェス、ワンマンと共に観たが、CHABOにしか出せない音、その音に乗ったCHABOの歌・言葉が琴線に触れた。しかもその音の1音1音に無駄がないばかりか、バンドとのグルーブも最高だ。どうやったらこんな演奏が可能なのか?その答えがなんともCHABOらしい。「1音1音大切にするとか、バンドのグルーブを大切にするとか、それはきっと準備段階で思うことだよね。ステージでプレイする時にそんなことはまさか考えない。そういうのはそれまでやってきたことが身体からこぼれ出るものだろうからさ。要するに千本ノック。それぐらいギターを弾かないと出来ることじゃない一般論というより俺はね。千本ノックやったはずだなんて裏付けがステージに立つことを支えるし。もし他の奴が千本なら俺は二千本やらないとなって思ったりね(笑)。そういう凌ぎ合いかもね。勿論自分のレベルでの話だけどさ。しかも、若い頃に比べたら体力やら何やらは落ちてるわけで、それを背負っている分、若い頃よりもっと必死かもしれない」と。 それだけではなく、若い頃にはわからなかったギターの深淵なる世界に魅了されていると教えてくれた。「B・Bキングさんって、何処で演奏してもB・Bキングさんの音を出すじゃない?そのB・Bキングさんが晩年に言ってたんだよ。〝いやぁ未だ音を探しているんだよ″って。それは謙遜とかじゃなく本当にそうだと思うんだよね。自分の音ってそういうものだと思う。或いは90歳を越えた著名な日本画家にインタビューするのをテレビでやっててさ。〝絵ってどんなもの?”って聞かれた画家は「わからん。だからまた1枚描くんだよ」って。そして、あの寡黙なジェフ・ベックでさえ〝歳月の収穫“っていう言葉をある時言っていてさ。年齢と共にいろんなことが落ちて行く中で歳月の意味もあるはずだっていうさ、そういう価値がギターとの付き合いにもあるんだろうね。そういうことを本当に実感するようになったかな」。

まだ手にしていない自分だけの理想の音を求めて、CHABOは自身の誕生日10月9日に日比谷野音でバースディライブ『雨あがりの夜空に2017』を行う。そして野音に放たれるそのギターの音は、小学生の時、久保さんという背の高いお兄さんからギターを教えてもらったあのクロスロードを曲がった時から地続きの音だ。そしてCHABOが寝床でもギターを抱えるほどして紡ぎ出してきた結果の音だ。

そんな贅沢な“年月の収穫”を秋の野音で味わおうと思う。


仲井戸麗市(なかいど れいち)REICHI NAKAIDO
1950年、東京都出身。1970年、古井戸でデビュー。79年忌野清志郎が率いるRC サクセションにギターリストとして加入。1990年RC サクセション無期限活動停止を機に本格的なソロ活動を展開。 SOLO、BAND活動と多岐に渡る。ギターリスト土屋公平(ex)The Street Sliders)とのユニット麗蘭(れいらん)を1991年に始動、昨年結成25周年を迎えた。
2017年10月9日の67歳バースディLIVE今年はCHABO BANDで「雨あがりの夜空に2017」日比谷野外大音楽堂で行われる。

CHABO BAND
仲井戸麗市(Vo.G)
早川岳晴(Ba) 河村"カースケ"智康(Dr) Dr.kyOn(Key)

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