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KIRINJI:KIRINJI TOUR 2018 レポート

2018年7月26日(木)渋谷CLUB QUATTROにて行われたライヴハウスツアー「KIRINJI TOUR 2018」最終日の模様をレポート。

KIRINJI

6月にリリースした最新アルバム「愛をあるだけ、すべて」を携え、福岡、大阪、愛知、東京で行った今回のツアー。本公演は渋谷CLUB QUATTROにて行われた2daysの2日目で、ツアーの千秋楽となる。前日同様、フロアには満員の観客が集っていた。

アルバムに収録されているインスト曲「ペーパープレーン」がSEとして流れると、ステージを覆うように垂らされていたアルバムジャケット柄の幕が落ち、そこにはメンバーの姿が。アルバム冒頭に収録されている「明日こそは/ It's not over yet」で、文字通りライブが“幕を開ける”。弓木英梨乃(Vo,Gt,Vl)はフェンダーのAmerican Original ‘60s Jaguarを手にし、バッキングを演奏する時は堀込高樹(Vo,Gt)のサウンドと絡みながら雄大なグルーヴを表現、メインリフを奏でる時は力強いプレイで観客を圧倒する。

この日はアルバム収録曲を軸に、“キリンジ”名義の楽曲も含む全19曲を披露。KIRINJIのメンバーに加え、矢野博康(Per)とKan Sano(Kb)がサポートとして参加した7人編成だ。最初のMCで堀込が「楽しい曲を中心に持ってきました」と宣言した通り、ダンサブルなナンバーが多く、観客は終始バンドサウンドに身を委ねて体を揺らしていた。

弓木は、前半はすべてAmerican Original ‘60s Jaguarを使用。楽曲のテイストに応じて多彩なプレイやサウンドを求められるが、時に繊細で時に激情的な弓木の演奏をAmerican Original ‘60s Jaguarは見事に表現する。

「非ゼロ和ゲーム」では千ヶ崎学(Ba,Vo)がグルーヴを引っ張り、弓木による優しいタッチのバッキングが堀込の歌を支える。しかし、リードプレイになると音が前に出てくるように存在感を発揮。弓木がヴォーカルを取った「Mr. BOOGIEMAN」では彼女のあどけない歌声にうっとりしてしまったが、ギターソロになると鋭いサウンドでライトハンドも駆使した超絶テクニックを披露。そのギャップに観客の目は釘付けになっていた。

MCを挟んで、RHYMESTERとコラボした「Diamonds」を披露。ここでも弓木は、バッキングではバンドサウンドの隙間を埋めるような、あえて控えめなサウンドを鳴らしていたが、アウトロではギターを弾き倒して圧巻のプレイを見せる。

続いて、堀込がアイドル育成ゲーム「アイドルマスター ステラステージ」と連動したアルバム「THE IDOLM@STER MASTER PRIMAL POPPIN' YELLOW」に提供した「LEMONADE」を弓木ヴォーカルで演奏し、「fake it」ではふくよかなサウンドを聴かせる。「雲呑ガール」ではファンキーなカッティングや情熱的なソロを披露。音の立ち上がりが良くタッチが明瞭に出るため、ギターサウンドに感情を乗せやすいのだろう。フォーキーなナンバー「この部屋に住む人へ」では、ワウも用いて粘りのあるギターを奏でるが、アウトロではきらびやかなサウンドになり、1曲の中でもキャラクターの異なる音色で演奏してみせた。

ゆるくて温かなムードのメンバー紹介を挟み、ハムバッカーのギターに持ち替えた弓木。後半は間髪を入れずに楽曲を披露して観客と一体になり、フロアの熱が徐々に上昇していくのを感じた。

最新アルバムの先行シングルとしてリリースされた「時間がない」では美しいコーラスワークで魅了したり、「The Great Journey」では田村玄一(Pedal Steel,Steel Pan,Gt,Vo)が観客を煽る。さらに「AIの逃避行」では弓木がラップを披露して歓声が上がった。

本編ラストは、弓木がハンドマイクでヴォーカルを取った「After the Party」。ステージを練り歩き、観客の顔を見つめながら、語りかけるように優しくメロウに歌い上げた。

アンコールでは再びAmerican Original ‘60s Jaguarを手に取る弓木。「まぶしがりや」では堀込のつま弾くガットギターのサウンドや、楠均(Dr,Per,Vo)のブラシを用いた柔らかなドラム、田村のスティールパンなど、温かなアンサンブルが会場を満たす。そこに弓木が優しく丁寧にギターサウンドを重ねていた。バッキングは柔らかなサウンドだが、ひとたび単音になるときらびやかな音色になり、ピッキングのニュアンスによってサウンドに変化を付ける。

最後はエキゾチックなメローナンバー「silver girl」を指弾きで演奏。Kan Sanoの演奏するシンセサイザーや田村玄一のスティールパンを中心にセッションも展開し、フロアを熱狂させて幕を閉じた。

この日、弓木は半分以上の楽曲をAmerican Original ‘60s Jaguarを用いて演奏していたが、Pure Vintage ‘62 Jaguarピックアップはプレイヤーのニュアンスを的確にキャッチし、バラエティに富んだプレイを可能に。あらゆるサウンドキャラクターを実現可能としながらも、ここぞという場面で存在感を発揮するAmerican Original ‘60s Jaguarのサウンドは、多彩なスタイルでファンを魅了する弓木のプレイと相性抜群だった。


KIRINJI
KIRINJI
KIRINJI

(Photo by 立脇卓)

セットリスト
SE ペーパープレーン
01.明日こそは/It's not over yet
02.非ゼロ和ゲーム
03.Mr. BOOGIEMAN
04.Diamonds
05.LEMONADE
06.fake it
07.雲呑ガール
08.悪夢を見るチーズ
09.この部屋に住む人へ
10.タンデム・ラナウェイ
11.新緑の巨人
12.時間がない
13.僕の心のありったけ
14.嫉妬
15.The Great Journey
16.AIの逃避行
17.After the Party

ENCORE
01.まぶしがりや
02.silver girl


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