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King Gnu 「King Gnu Live Tour 2019 AW」レポート

King Gnuが11月26日(火)Zepp Tokyoにて、ライヴハウスツアー「King Gnu Live Tour 2019 AW」のファイナルを開催。その模様をレポート。

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この日、ステージを覆い隠すほどのスモークの中で演奏を始めたKing Gnuの4人を迎えたのは、1曲目の「飛行艇」からバンドと一緒に歌う、観客の大きなシンガロングだった。その「飛行艇」は、常田大希(Gt,Vo)がライヴの幕開けに相応しい勇壮なリフを奏でるアンセミックなロックナンバーだが、そんな楽曲の魅力だけにとどまらず、聴く者の気持ちを奮い立たせる言葉が観客に声を上げさせている。

10月14日の仙台公演を皮切りに、彼らは今年2度目の全国ツアーを廻ってきた。そのファイナル公演となるZepp Tokyoは、すし詰め状態のスタンディングの1階はもちろん、2階も立ち見スペースまでいっぱいだ。ここからほど近いZepp DiverCityで11月16日と17日に2デイズ公演があったにもかかわらず、だ。バンドの人気が窺えるではないか。この日、超満員のZepp Tokyoに渦巻いていたのは、今年1月のメジャーデビューをきっかけに、あっという間に時代の寵児になっていった4人が日本のミュージックシーンに作り出した、まさに熱狂が凝縮されたものだった。

いきなりそんなことを印象づけた「飛行艇」から、バンドは井口理(Vo,Kb)が奏でるピアノのリフを際立たせた「Sorrows」、そして「あなたは蜃気楼」「ロウラブ」とアップテンポかつファンキーな曲をつなげ、さらに会場の温度を上げていった。そして、そんな序盤から一転、バンドが持つメロウな魅力をアピールした中盤で、一際、観客を沸かせたのが「Vinyl」だった。

絶妙に跳ねる勢喜遊(Dr)のドラムに、常田がメランコリックなリフを重ねた瞬間、客席から悲鳴に近い歓声が沸き、「飛行艇」同様、常田がキャッチーなリフ作りの名手であることを改めて印象づけたが、この「Vinyl」では曲の中盤、巧みにワウとトレモロアームを使って曲の顔とも言えるそのリフにあえてゆがみを加えたところに、ギタリストとしての、ひいてはバンドとしてのアイデンティティを感じた。

この日、常田はアコースティックセット以外、自らカスタマイズしたフェンダーのAmerican Performer Mustang®のみをプレイ。“新曲やります!”と「Vinyl」につなげた、常田の作詞・作曲による家入レオの「Overflow」のセルフカヴァーでは、歯切れが良く高音弦を鳴らしてもアタック感のあるカッティングを。そして、エネルギッシュな「Overflow」から一転、ムーディに聴かせた「NIGHT POOL」ではコードのワンストロークで、まるで空間を支配するように轟音とその残響を鳴らしたのだった。エフェクターの使い方によるところも大きいが、それだけ幅広い音色がMustang1本で出せるのだから、何も演奏の流れを中断して、わざわざギターを持ち替える必要はない。

曲間をほとんど空けず、余計なMCも挟まず、矢継ぎ早に曲をつなげるのは、それも理由のひとつだと思うが、やはり楽曲と演奏だけで勝負したいと考えているのだろう。ライヴの流れが単調にならないのは、閃きに満ちたアレンジによる恩恵が大きいが、例えば井口と常田がハーモニーを重ねるバラード「白日」から、常田がトラメガで歌ったリズムが跳ねるR&Bナンバー「Slumberland」というふうに、彼らの楽曲が多彩であることに加え、その多彩な楽曲の落差がアクセントになるように曲を並べているからだ。

未音源化の「Vivid Red」から、新井和輝(Ba)はそれまで使っていたフェンダーのAmerican Ultra Jazz Bass® VからAmerican Deluxe Jazz Bass Vに持ち替え、音数の多いフレージングで演奏を支える重低音にソリッドな質感をプラス。スラップを交えながら、リフを弾いたバラードの「Hitman」では音色に揺らぎも加わっていたように聴こえたが、井口が歌の力で観客を圧倒した曲の終盤では、井口の歌をバックアップするように重低音を響かせた。

恒例のアコースティックコーナーでは、バラードの「Don’t Stop the Clocks」「McDonald Romance」と、ファンクナンバーをスウィンギーにアレンジした「Bedtown」の3曲を披露。常田がこのコーナーで弾いた、フェンダーの American Acoustasonic™ Telecaster®のエレキでもアコギでもない独特の音色は、単音弾きしたオブリやソロに顕著に表れていたように感じられた。「Bedtown」でシンガロングを誘うと、その盛り上がりのままバンドは終盤戦に突入する。

ここでも、轟音ブルースロックの「Tokyo Rendez-Vous」から「Prayer X」、煽情的なダンスナンバー「Flash!!!」、ライヴではお馴染みのアンセミックなポップナンバーで、この4日後からCMソングとしてテレビで流れることになる「Teenager Forever」という彼らの楽曲が持つ多彩さをぎゅっと凝縮したような4曲を並べ、シンガロングの声を上げる観客とともに、ツアーの大団円に相応しい大きな盛り上がりを作り上げたのだった。もちろん、この終盤戦でもメンバーそれぞれに熱度の高い演奏を繰り広げ、エッジーな感性を持つライヴバンドであることをアピールしたのだが、その彼らが演奏する楽曲がどれも、もう1度、いや何度でも聴きたいと思わせる魅力を持っていることに、筆者は今さらながら彼らが巻き起こした熱狂の理由を知ったのだった。

そして、来年1月15日、新しいアルバム「CEREMONY」をリリースして、2月から国立代々木競技場第一体育館2daysを含むツアーを開催することを発表すると、バンドはアンコールに応え、「傘」「サマーレイン・ダイバー」の2曲を披露。どこか讃美歌にも聴こえる後者では、再び観客のシンガロングとともに“神々しい”という言葉が相応しい歓喜と祝福に満ちた景色を作り上げると、それまでクリーントーンでバッキングに徹していた常田が、曲の終盤“Mustangは荒々しい音でかき鳴らしたくなるギター”とFenderNewsで語っていたその言葉通りに、ジミ・ヘンドリックスばりのエモーショナルなソロを轟音で奏でた。


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セットリスト
01.飛行艇
02.Sorrows
03.あなたは蜃気楼
04.ロウラヴ
05.It's a small world
06.Vinyl
07.Overflow
08.NIGHT POOL
09.白日
10.Slumberland
11.Vivid Red
12.Hitman
13.The hole
14.Don't Stop the Clocks
15.McDonald Romance
16.Bedtown
17.Tokyo Rendez-Vous
18.Prayer X
19.Flash!!!
20.Teenager Forever

ENCORE
01.傘
02.サマーレイン・ダイバー


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