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ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ -レポート

ASKAが復帰後初となるバンドツアー「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ -」を開催。4月23日(火)日本武道館にて行われた、追加公演初日の模様をレポートする。

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復帰後初となるバンドツアー「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ-」。2月6日の八王子公演からスタートし、全国13都市を廻った本ツアーは各地でソールドアウト。その追加公演の一発目が4月23日の日本武道館公演である。

定刻18時30分、武道館にオーケストラが演奏する壮大な曲が流れる。この壮大なオーケストラ曲が終わると同時に、ツアータイトルが記されている紗幕が落ち、1曲目の「未来の勲章」が始まった。ステージ中央に、フェンダーの赤いRedondo Classicを弾くASKAが立ち、バックには腕利きミュージシャンの集まりでもあるASKAバンドが音を奏でる。“国宝級”という言葉がぴったりの、ASKAのヴォーカルを支えるバンドの演奏は絶妙だ。どのパートも粒立ちが良く、キレのある太いサウンドだが、ASKAのヴォーカルを盛り立てることに徹している。1曲目からオーディエンスは総立ちだ。

約6年ぶりにバンドでのライヴを行うASKAの、満を持しての武道館公演。しかも武道館にASKAが立つのは実に7年ぶりで、ファンだけではなく、ASKA本人もメンバーもこの日を待ちわびていた。だが…本番前のリハーサルで、前日から風邪を引いてしまったことをASKAはメンバーに打ち明けた。ASKAは現在61歳。“国宝級”のヴォーカリストだが、声帯はやはり全盛期ではないはず。今回のツアーでは「MOONLIGHT BLUES」のみ曲のイメージを変えるためにキーを変えているものの、それ以外の曲は、20代に書いた曲でさえも原曲のキーで歌っている。

しかも、アンコールを含めて全22曲。時間にして2時間30分のステージ。風邪を引いた状態で、それだけの曲数を原キーで歌うのは相当に過酷なはず。だが、ASKAというヴォーカリストは手加減をすることを知らない。この日も、1曲目から全開のヴォーカルで歌を届けてくれている。ただ、風邪が気になるのか、久しぶりの武道館の緊張からなのか、本ツアーの他のステージと比較して、ライヴ中盤まではどこか少しだけ喉に引っ掛かりがあるような歌い方だった気がしていた。

それが、ライヴ後半で一変。「FUKUOKA」という曲から、ASKAの歌がまるで宇宙にでも届くかのような勢いになった。「FUKUOKA」に続いて、CHAGE and ASKAのヒット曲「LOVE SONG」が飛び出しオーディエンスも大スパーク。その勢いでASKAの歌がさらに加速したのがわかった。

その後の「リハーサル」は、再びフェンダーのRedondo Classicを弾きながら歌う。この曲のPVでASKAは白いフェンダーのTelecasterを弾いているが、今回のツアーではRedondo Classicをセレクトしている。

ちなみに「リハーサル」はヘヴィなギターサウンドが特徴なのだが、ASKAがこのツアーで頻繁に演奏するRedondo Classicは、フィッシュマンと共同開発されたプリアンプシステムが搭載されているエレアコで、アコギでありながらエレキギターに近いフィーリングとサウンドで演奏することができる。ASKAバンドにはギタリストが2人いて、静かなバラード以外は2人ともエレキを弾いている。そこにASKAもエレキを弾くと、ヘヴィなうわ物が被りすぎて歌を邪魔してしまう。とは言え、普通のアコギだと音が埋もれてしまう可能性がある。その視点で言うとRedondo Classicは中間的な存在で、バランスに優れた演奏を生み出すことができる。

それと、Redondo Classicは見た目もいい。そもそもASKAがRedondo Classicを購入したのは、ボディのレッドカラーに魅せられたのが理由だとかつての取材で教えてくれた。ASKAは去年に還暦を迎え、還暦を象徴する赤いギターでライヴもレコーディングも使えるギターを探している時に、このギターと出会い一目惚れに近い形で購入したという。さらに、ヘッドシェイプにもライヴでRedondo Classicが使われる秘密があるのではないかと思っている。少し話が反れるが、「と、いう話さ」ではヴァイオリンのクラッシャー木村が曲の最後にひざまずいてヴァイオリンソロを弾き、それがライヴのクライマックスのひとつになっているが、その演出はASKAのアイディアだそう。

つまりASKAは、見え方にもとてもこだわっているということだ。これは、CHAGE and ASKAとしてもソロとしても、日本だけではなくアジアの大きなステージに何度となく立ってきたASKAらしい発想。音や演奏だけに限らず、大きなステージで大勢の観客を惹きつける術を知っていて、それがこのRedondo Classicの使用にもつながっているのだと思う。たかがヘッドシェイプだが、エレキギターのヘッドシェイプを持つRedondo Classicは見た目もロックで、歌を大切にしながらも、激しい曲も多いASKAのライヴには欠かせない存在となっている。

それが証明されたのが11曲目に演奏された「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」。ASKAのソロ曲の代表曲であり、ライヴでもっとも盛り上がる曲。歌、演奏ともに力点が置かれるこの曲で、ASKAはRedondo Classicを弾きながら歌った。演奏もサウンドも歌もとんでもなくパワフルで、武道館が揺れた。

本編でソロ活動最大のヒット曲「はじまりはいつも雨」を歌い上げ、アンコールでは「YAH YAH YAH」も飛び出し、平成の終わりに華を添えるようなライヴだった。とは言え、デビュー40周年のASKAは、過去にしがみつくわけではなく、40年が積み重なった今を表現すべく、最近の曲や未発表曲を織り交ぜたセットリストで本ツアーに臨んだ。そして、そのライヴを通してASKAは現在進行形の表現者であることを示した。

気が付けば22曲中6曲でRedondo Classicを弾いた。ギターを弾かずにヴォーカルだけに専念した曲が8曲あったので、ギターを弾いた曲で言うと半数に近い楽曲でRedondo Classicを弾いたことになる。現在進行形の表現者、ASKAにとってそれだけRedondo Classicは欠かせない存在なのだろう。この日に演奏された「憲兵も王様も居ない城」も、Redondo Classicを使って作曲された曲だ。

ASKAは6月にアジアツアーを行い、その後は音源制作に入るという。Redondo Classicで新しい曲を生み出し、そしてまた新しいツアーに出るのだと思う。現在進行形のASKAとRedondo Classicは、新しい軌跡をそこでも起こすことだろう。


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セットリスト
01.未来の勲章
02.ONE
03.明け方の君
04.cry
05.Girl
06.憲兵も王様も居ない城
07.Man and Woman
08.めぐり逢い
09.MOONLIGHT BLUES
10.はじまりはいつも雨
11.いろんな人が歌ってきたように
12.FUKUOKA
13.LOVE SONG
14.リハーサル
15.と、いう話さ
16.晴天を誉めるなら夕暮れを待て
17.ロケットの樹の下で
18.今がいちばんいい
19.散文詩~歌になりたい


ENCORE
01.YOUNG MAN
02.YAH YAH YAH
03.UNI-VERSE


› ASKA:https://www.fellows.tokyo/