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高みを極めたミュージシャンシップ|ハマ・オカモト インタビュー【後編】

フェンダーを代表する日本人ベーシスト、ハマ・オカモトにインタビュー。後編ではベースにフォーカスして語ってもらった。

HAMA OKAMOTO

インタビュー後編では、フェンダーとのエンドース契約から4年経った今、ハマ・オカモトが何を考えているのか迫ってみた。

表面的なコピーではなく、徹底的に完コピすることに挑戦して欲しい
 

―  エンドース契約から4年経って、名実ともに日本を代表するフェンダーベースマンと言えるハマさんが、ここ最近のベースシーン、音楽シーンをどう見ているのかも気になります。

ハマ・オカモト(以下、ハマ)これは冗談でもなんでもなく、ベースを弾いていても「あ、ギター弾くんですね」と言われることが数年前までは多かったんです。そのくらい、ベースの認知度は低かったというか。まあ、「ギター」という言葉自体の認知度の方が断然高いですから、それは仕方のないことだと思っていました。よく言う「バンドあるある」ではないですが、「ジャンケンで負けたからベース」、「余ってたし簡単そうだからベース」といった扱いでしたし、自分自身そんな感じでベースを始めたところもあるので。

―  そうだったんですか(笑)

ハマ  ただ、エンドース契約をしている以上、少しはベースを広めるための貢献はしていきたいと思っていて。亀田誠治さんが始めた「ベースの日」を始め、いわゆるイベントごとが増えていく中、最近はようやく「楽器を始めたいランキング」で上位にランクインされるようになりましたし、実際にベースを弾き始める人……ベース人口も増えた実感があって。ようやく「カッコいい楽器」という風に、認識してもらえるようになってきたのは嬉しいことですし、それに少しでも自分が貢献できているのだとしたら、とても光栄なことだなと思っています。

―  フェンダーの現行モデルについてはどんな印象をお持ちですか?

ハマ  毎年新しいモデルを触らせてもらっていますが、今まではずっとヴィンテージを好んでいたので、新製品をライヴの現場に導入することはほとんどありませんでした。でも、「American Professional Series」(アメプロ)の、今年のモデルは本当に素晴らしくて。今はアメプロを1本、それからさっき話したデニス・ガルスカのカスタムショップはライヴでも使っています。ヴィンテージ楽器が持っている、絶対的なクオリティというのがあって、そこに現行モデルもグイグイ食い込んできているのがすごいなって。

―  「攻め」の姿勢を感じる、と。

ハマ  だって、今まで散々名機を作ってきたわけですから、変な話、あとは別にテキトーに作っていたっていいわけじゃないですか(笑)。でも、ジャズベ、プレベのクオリティを「まだまだ刷新していこう」という意思が、ものすごく伝わってきて。そこは本当にすごいと思うし感服します。こうして「ベースシーン」が盛り上がってきている昨今、フェンダーという老舗が攻めの姿勢でいるのは、かなり重要なことだと思います。逆に言えば、だからこそシーンがきちんと活性化しているとも言えますよね。

―  ちなみに、アメプロのどういうところが好きですか?

ハマ  今までの現行モデルは、例えば「62年とか63年のモデルをベースにしています」というふうに、往年の名機を「忠実」に再現していたんです。そうすると、忠実であるが故にネックが太かったりして、やや使いづらい印象もあって。でも今年は目線の角度を変えたのか、往年の名機のディテールは再現しつつ、楽器としての弾きやすさは今風に更新されている。そうやって残すべきところは残し、改良すべきところは改良しているところがさすがだなと。

―  ヴィンテージの良さって、どんなところにあるんでしょう。

ハマ  言葉では言い表しにくいですし、文字にするのも大変だと思いますが(笑)、例えば現行の楽器が持っている音がこのくらいだとして(と言って、両手で円を作る)、それが経年劣化などによって少しずつ削れていき、芯の部分が削り出されたのがヴィンテージの音だと思うんです。その、削れた音、うま味成分を知っていると、削れる前の元気な成分が少しお腹いっぱいに感じてしまうというか。でも、今年のアメプロは、ヴィンテージほど丸みはないけど、新品ほど暴れていない、ちょうどいい按配に削れた音がする。なので、ものすごく使いやすいんです。

―  ところで、最近のベーシストで共感する人はいますか?

ハマ  Vulfpeckというミニマルファンク・バンドのジョー・ダート。僕は基本的に、そういう現行のバンドをあまり聴かないのですが、この人のベースはすごく良くて。かなり聴いていますね。メンバーがみんなすごく野暮ったくて好きです(笑)。

―  彼のベースの、どんなところが好きですか?

ハマ  僕はあまり理論がわかっていないので、理論を基にしたソロなどを聴くと、違う楽器のように聞こえてしまってあまり共感できないんです。でも彼は、ペンタトニックばかりやっていたある日、違うところを押さえてみたら、「あ、こういう音聴いたことがある、こういうソロ取る人いる!」という風に進化していった気がするというか(笑) その、天然な感じがものすごく共感できる。

―  もし読者に、ハマさん独自のベース練習法を伝授するとしたら?

ハマ  僕はメトロノームの練習、楽譜を読むなどの練習を一切してこなかった人間なので、一つの特殊な例として捉えてもらえるといいと思いますが、とにかくコピーしまくること。しかも、表面的なコピーではなく、徹底的に完コピすることに挑戦して欲しい。単にベースの音の運びをなぞるだけではなく、その音がどのくらい長くて、どのくらいの強さで弾いているのか、次の音へ行くまでのゴーストノートはどんな風に入っているのかと。そこまでの完コピは、意外とできていない人が多いと思います。やっているつもりで出来ていなかったりもしますし。まずはお気に入りの曲を見つけて、そのベースラインを徹底的に完コピする。そうすると、その人のクセやテクニックも身についてくると思うので。

―  写経」の域ですね。曲の聴こえ方も変わって来そうです。

ハマ  (笑)そう思います。ちなみに僕は、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの「Stone Cold Bush」でそれをやりました。ベーシストならみんな弾いてみたいと思うくらい、カッコいいベースソロが入っている。高校生くらいの頃かな、ちょうど動画サイトの「弾いてみた」のはしりの時期で。世界中の人たちが上げていた「Stone Cold Bush」のソロの動画、おそらく僕は全部観ていると思いますが、“完コピ”は1人もできていないんです。それがキッカケで、もっともっと練習するようになりました。

―  では最後に、8月23日に渋谷クアトロにて開催されるイベント、「SUNBURST SOUL SESSIONS」への意気込みを聞かせてもらえますか?

ハマ  竜ちゃん(澤竜次)も総さん(山内総一郎)もReiちゃんも、元々みんな知っていますし、おまけに素晴らしいプレーヤーで、しかも全員が同じ事務所(笑)。総さんも、フェンダーとすごくいい楽器を作っていますし、竜ちゃんは何年経っても同世代で最高レベルのギタリストだと思っているし、Reiちゃんはもう規格外で(笑)、あんな人は世界探してもあまりいないと思いますし……。自分がそこに混じってベースを弾けるのは、とても光栄だし嬉しいです。各々がコーナーを設けて好き勝手やることになっているので、僕自身も楽しみ。それぞれのバンドのファンの方はもちろん、そうじゃない方も是非遊びに来て欲しいです。

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HAMA OKAMOTO

HAMA OKAMOTO PRECISION BASS® #4
「ありそうでなかった弾き易いプレシジョン・ベース」をテーマに、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)が提案するシグネイチャー・モデル、HAMA OKAKMOTO PRECISION BASS® #4(ナンバーフォー)。ジャズベースのスリムなネック・シェイプを採用し、スムーズな演奏性とプレベ特有のサウンドを備えたユニークなモデル。ハマ・オカモト印ともいえるパドルペグ、ブリッジカバーを採用し、ボディ材には、発色の明るいバスウッドを使用。

› HAMA OKAMOTO PRECISION BASS®製品ページ


ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)
中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンド、OKAMOTO’Sのベーシスト。2010年、日本人男子としては最年少の若さでアメリカ・テキサス州で開催された音楽フェス「SxSW2010」に出演。アメリカ七都市をまわるツアーや豪州ツアー、香港、台湾、ベトナムをまわったアジアツアーなど、海外でのライヴを積極的に行っている。これまでシングル8作品、アルバム6作品を発表。2015年9月にはメンバー渾身のロック・オペラアルバム『OPERA』を発売。また、同年11月からは自身初となる東阪ZEPPワンマン公演を含む、全国22カ所をまわるツアー「OKAMOTO’S TOUR 2015-2016 “LIVE WITH YOU”」を年またぎで敢行し、大盛況のうちに終了した。2016年6月からは「OKAMOTO’S FORTY SEVEN LIVE TOUR 2016」と題した、キャリア初の47都道府県ツアーを敢行し、ツアーファイナルは日比谷野外大音楽堂にて開催された。2017年8月2日には約1年半ぶりとなるオリジナルフルアルバム『NO MORE MUSIC』をリリース。また、2017年10月には、東京・中野サンプラザにてキャリア初のホールワンマンの開催がアナウンスされたが、瞬く間に即完し、10月30日より全国23カ所を回るツアー「OKAMOTO’S TOUR 2017-2018 NO MORE MUSIC」の開催も決定している。

› OKAMOTO’S:https://www.okamotos.net/


FENDER×SMA「SUNBURST SOUL SESSIONS」

ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)やOKAMOTO'Sも参加するこの夏のイベント。詳細はこちらから

  • ■ 日時:2017年8月23日(水)
  • ■ 場所:恵比寿 LIQUIDROOM
  • ■ 出演者:山内総一郎(フジファブリック)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、澤 竜次(黒猫チェルシー)、Rei、OKAMOTO’S(オカモトショウ(Vo.)オカモトコウキ(Gt.)オカモトレイジ(Dr.))、黒猫チェルシー(渡辺大知(Vo.)宮田岳(Ba.)岡本啓佑(Dr.))、金澤ダイスケ(フジファブリック)
  • ■ チケット料金:立見¥4,320(税込)+ 1ドリンク(別途) ※未就学児童入場不可

チケット情報
 

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