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くるり「チミの名は。」レポート

2017年2月28日(月)Zepp DiverCity TOKYOにて行われた全国ツアー「チミの名は。」ファイナル公演の模様をレポート。

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結成20年の歩みを収めたベストアルバム『くるりの20回転』を引っさげて行われた全国ツアー「チミの名は。」が千秋楽を迎えた。本ツアーの公演前、サイト上で「いれかわったりがったいしたり」という文言が掲載されていたが、楽曲によってメンバーが入れ替わったり時に交わったり、楽曲が持つ音像ごとに編成をスイッチさせていく見応えのある一夜となった。メンバーは岸田繁(Vo, Gt)と佐藤征史(Ba, Vo)に加え、サポートに松本大樹(Gt)、山本幹宗(Gt)、野崎泰弘(Kb)、クリフ・アーモンド(Dr)、森信行(Dr)を迎えた強力な布陣だ。

青と白のまばゆいバックライトのなか登場したメンバー。「くるりです。よろしくお願いします。」と話したかと思えば、岸田の代名詞とも言える1961年製テレキャスターによるバッキングから「ワンダーフォーゲル」がスタート。右手の力加減でクリーンからクランチまで行き来し、楽曲の機微を繊細に表現していく極上のサウンド。佐藤征史はフレテッドされたJACO PASTORIUS JAZZ BASS®を使用。シンプルなルート弾きが驚くほどふくよかで、岸田のカッティングと相まって心地よい空気感に包まれ、「くるりのライブに来たんだ!」と実感させられる。

トレモロがかったアルペジオと岸田繁の歌で幕を開けた「魔法のじゅうたん」では、ストラトキャスター(フィエスタレッド)を手にし、情景豊かなトーンを演出。サポートの山本幹宗はAMERICAN PROFESSIONAL STRATOCASTER®で芯の太いクランチトーンを生み出し、ノスタルジックな楽曲はゆっくりと確かに熱を帯びていく。ギターが松本大樹、ドラムがクリフ・アーモンドに代わっての「BIRTHDAY」は、ピアニカや幻惑的なコーラスを効果的に取り入れながら、オリエンタルかつノスタルジックに響き渡る。

ライブ中盤、岸田はギターを手放し、ハンドマイクでR&Bやヒップホップ的なアプローチの「琥珀色の街、上海蟹の朝」、交わらない愛の境界を描いたポップな「ふたつの世界」を歌い上げる。どちらも近年の楽曲で、くるりの楽曲としては異色の雰囲気だが、フロアも他の楽曲とはベクトルの違う盛り上がり方をしていたのも興味深い。音楽ジャンルが変わろうと、くるりが歌えばくるりの世界になる。そしてそれは、抗うすべなく胸を打つ。

終盤に差し掛かると、全メンバーがステージに登場して圧巻のパフォーマンスを繰り広げる。「Long Tall Sally」では山本幹宗がブズーキ、松本大樹がバンジョーを弾き多国籍的かつ実験的な世界を作り上げたかと思えば、「ロックンロール」では音楽の原体験を想起させるようなグッドメロディに彩られる。山本幹宗のAMERICAN VINTAGE '52 TELECASTER®による硬質なカッティングでスタートしたブルースロック調の「Ring Ring Ring!」では、岸田繁はブルースハープの音色をアンプ'57 Custom Champから出力。「HOW TO GO」で佐藤征史は1969年製ジャズベースを手に、クリフ・アーモンド、森信行とともに強靭なグルーヴで会場を席巻した。

アンコール、アコギを抱えて1人で登場した岸田繁は「アルバムに入れようと思って入れらなかった曲」として「The Veranda」を紡ぎ、続く「遥かなるリスボン」では佐藤征史と2人でドラマティックな景色を描き出す。「みんなの健康を御祈願してギフトのような曲を」という岸田繁の言葉から、素晴らしき音世界の「Liberty&Gravity」でライブは幕を閉じた。

くるりのライブは音がとにかく素晴らしい。会場に足を運んでライブを観るということの、一番のご馳走に違いない。岸田、佐藤両氏が、自身の楽器に向き合いつつ20年間に渡って積み重ねた音の断層を目の当たりにし、彼らの壮大なサーガにトリップした一夜。会場を後にしてもなお、その雄大なアンサンブルは止むことなく脳内をループしていた。

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Photographs by 岸田哲平

› くるり:https://www.quruli.net